かもがわ総研

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外資系企業の日本法人で求められる役割について

とある外資系メーカーの日本法人の面接を受けてきた。

それなりに名の知れた企業であるため、 事業内容はけっこう入念に下調べをしていった。

そして身だしなみを重視されるということだったので、 前日に髪も切ったしスラックスもクリーニングに出しておいた 。

日系と外資両方の面接を受けていておもしろいなと思うのは、 日系の面接が「尋問」のように進んでいくのに対して、外資だと「雑談」のような雰囲気になることだ。

入社したあとにこんなはずではなかった、となるのは企業にとっても応募者にとっても不幸になるだけなので 、面接は企業の考え方を知ってもらうことを目的にしているとのこと。

そのためざっくばらんに給料や競合他社との状況など、採用の背景などガンガン聞かせてもらえた。

面接をしてくれたマネージャーの方はかなり頭が切れそうな印象を受けた。商社にも高学歴な方はたくさんいるが、理系の賢さに触れる機会はなかなかない。

よくいる博覧強記だけれどもコミュニケーションが苦手なタイプではなく、対人折衝能力も極めて高いオールラウンドな人だった。

 

高学歴な人に共通する(ように思われる)性質として、

・「帯に短し襷に長し」や「さもありなん」といったことわざや古語を会話に織り交ぜる。

・自分と異なるタイプの人間と話してもありのまま受け入れる(≒ 素直)

・クッション言葉を多用(「少し意地悪な聞き方をしますが、」「おっしゃることは理解しますが」「 少し質問を変えますが」など)

という点があるように思う。わりと話し方で違いが分かる。

普段関西弁コテコテの体育会系組織で揉まれている自分にとっては こちらのほうが居心地が圧倒的に良い。こんな上司がほしいと思った。

 

前置きはこれくらいにして、 途中から外資系企業の日本法人についての認識の話になった。

入社後にどのようなビジョンを持っているかという質問はどの会社 であってもほぼ100%の確率で聞かれるため事前に大枠くらいは 用意していたので、それを組み合わせて次のように答えた。

「日本市場での先兵として、シェアを高めるため日本の顧客のニーズを汲み取り本社へ積極的に 発信していく。 そして日本市場ならではの要望や事例をまとめ本社にとっての日本 法人のプレゼンスを高めていく。」

しかしこの回答は頭の切れる面接官には不満だったようだ。「 弊社内でもそういうマインドの方は多いんですけどね~」と前置きして、質問を重ねてきた。

「弊社内でも昔日本企業とジョイントベンチャー(合弁企業)を作って、双方の製品モジュールを組み合わせることであらゆる顧客の要望に 応えられる仕組みを整えたことがありました。 これは営業サイドからのかねてからの要望でもあったので。

果たしてこの合弁会社がスタートしたあと当社製品の売上はどうなったと思いますか?」

 

ぼくは答えに窮した。 今言ったばかりの日本法人の役割に一貫性を持たせるならば売上は 伸びたと答えるほかないからだ。

答えは案の定「売上は思ったほど伸びなかった」。

この失敗はマーケティングの面でも重要な示唆を与えてくれる。顧客の要望に応えたからと言って必ずしも受注に結び付くとは限らないからだ。

恋愛でも自分勝手なオラオラ系男がモテるのも同じ原理なのだろうか。いや、ちがうか。

ぼくは頭をフル回転させても何故そうなるのか分からなかった。そしてその合弁会社は数年前にひっそりと解散し社員はそれぞれの会社に戻っていった。

それを踏まえて、面接官が考える日本法人の役割というのはこうだ。「本社で作るグローバルスタンダードの製品を、なんとかしてそのまま日本の顧客に使ってもらうこと。

顧客の要望に合わせていちいち品番を増やしていてはそれだけ生産ラインを増やさなければならずコストが上がりキリがない。本社は各国から上がってくる要望などには耳を貸さない。

そうした制約の下で大手企業からシェアを奪っていかなければならないんです。」

結果的にぼくは面接官の考えと真逆の意見を述べてしまったわけだが、不思議とそれほど焦らなかった。

清々しいほどに間違えてしまい、そのことを理路整然と説明してもらえたので、もう取り繕う気にもなれなかった。

ここの会社は落とされるだろうが、後悔はしない。むしろこの経験を次に生かしていきたいと思った。

 

世界は広い。

 

日本法人の役割まとめ

・最重要ミッションは日本市場でのシェア拡大

・ただし本社は個別の要望には応えてくれない→ 生産コストが上がるから

・顧客からの要望に応えても受注とはならない

・ 日本法人は顧客からの要望に対してスペックを変えずになんとか応 える方法を考える

これ、ほぼ商社やん。笑

※ただし上記の内容は必ずしもすべての外資日本法人に当てはまらない。製造業だからそうなるのであって、徹頭徹尾顧客の要望に寄り添うことが最適解になる産業もあるもしれないことを付け加えておきたい。