かもがわ総研

ベトナムでもがく中間管理職です。営業、マーケ、法務、採用なんでもやってます。

中国のトレンドの変遷の早さについて

 

ワールドビジネスサテライトの今日の特集。

春節の爆買いを追跡するということで、本ツイートのリプ欄では「いつの話してんねん」と突っ込まれていましたが、普段から中国に業務で関わっていない限りは一般の人は知る由もないのかなと思っています。

 

toyokeizai.net

しかし、2015年ごろに全盛を誇ったラオックス銀座店が昨年8月にひっそりと閉店していたというニュースを見るまでもなく、中国人が日本に来て百貨店などのリアル店舗でモノを購入する数量は年々減少してきているというのが現状です。

その背景にあるのは越境ECです。越境ECというのはインターネット通販のインターナショナル版のことです。越境ECの登場によってわざわざ日本に来なくとも中国にいながら日本製品が売れるようになったからです。

日本に来て両手に持ちきれないほどの荷物抱えて街中を歩き回るのは大変なことは容易に想像がつきます。中国にいながら買えるようになるのであれば中国の消費者はそちらを選択するでしょう。

とはいえ、やっぱり日本で買ったものが信用できるという人も少なくないので、あくまでも日本の店舗で買いたいという意見も根強い。そこで近年は自分の分だけでなく、他人の分の買い物も代行してあげるというビジネス(代購)が普及してきます。日本に滞在している中国人留学生の貴重な収入源になったそうです。

中国人一人が友人など数人分の買い物を兼ねているため、化粧品などを販売する日本の百貨店の売上は彼らの購買意欲によって支えられてきました。

ところが、この状況をおもしろく見ていない人がいます。中国政府です。代購はかなりの規模の経済を動かしているにも関わらず、バイヤーの多くはハンドキャリー(かばんに詰め込む)で持ち込むため関税を課されることなく持ち帰ることができました。だからこそ安く買えてかつ代購者の利益も捻出できるのです。

翻って中国政府は人民がこれだけの物品を海外で購入し、国内に持ち帰ってきているのになんら税金を徴収することができずにいました。

そこで、ついにと言うべきか、中国政府は2019年1月1日から中国EC法を改正し、インターネットを活用して商品を販売する全ての者を対象に、営業許可の取得を義務付けたり、納税義務を課すという法律を施行しました。この法律は代購業者に大打撃となるという予想がされていましたが、果たしてどのような影響が出るのでしょうか。

今年の春節はこのEC法が始まってから最初の大きなイベントということで試金石のような位置付けになっています。大方の予想通り、インバウンドでの売上は大幅に下落していました。旅行者数は伸びており、旅行者は自身の買い物はするでしょうが、以前までは他人の分まで買い物をしていたのですから販売数量が落ちるのは当然のことです。

では日本企業はこのままインバウンド経済が縮小していくのを指を加えて見ているしかないのでしょうか?日本企業の中にはすでに越境ECに取り組んでいます。もともと化粧品や美容系の商品は、同じアジア人ということで肌に馴染みやすいという、欧米のブランドにはない利点があり、品質の高さのイメージもあいまってとても人気があります。インバウンドで売れなくとも越境ECで売れるのであれば、ぼくはむしろその方が日本企業にとってはメリットは大きいと思います。

その理由としては、単純に店舗を拡大する必要がないこと、また店舗に中国人対応のための人員を配置する必要もなくなることがあります。越境ECの場合では、商品はあらかじめコンテナで大量に保税倉庫まで送っておき、アリババやJDなどのプラットフォームの売場の中に中国語のサイトを作って売れれば倉庫から配送するだけです。

消費者はウェブサイトを見て買うようになるだけなので、コストを抑えながら売上を伸ばすことができるようになるでしょう。その分売れるためのマーケティングが重要になってきます。

商品の上手なアピールというと、日本企業は苦手なイメージがあり、欧米のラグジュアリーブランドや同じアジアの隣国である韓国などと競争していけるかというところです。

また近年は、もっと心配な懸念が頭をもたげてきているようですが。

newspicks.com

これまで日本ならではの高品質なトイレタリー・日用品のメーカーとして最大手企業として君臨している花王の中国での業績が伸び悩んでいます。

花王の主力商品の一つである紙おむつメリーズのシェアが中国の地場のメーカーの商品に追いつかれてきているのです。それだけ中国企業の技術力が上がってきているという証拠ですね。

実は衛生面については同じアジア人である日本人と中国人の間でも隔たりがあると思っていて、例えば中国人はハンカチは不衛生だと思っていてあまり使いたがりません。代わりに何を使うかと言うと、使い捨ての紙タオルのようなものを携帯しています。

これだけに限らず、朝洗顔したあと顔を拭くのも紙タオル(正確には不織布というのですが)を使用しており、一度タオルは使わないのですか?と中国人のエージェントに聞いたことがありますが、不潔ですし、洗濯する手間も省けて便利じゃないですかとのこと。

子供の数も多くおしりふきの消費量も非常に多いので、中国には不織布の製造機械がイケイケドンドンで設備されています。たくさん作っていればコストも下がりますし、ノウハウもおのずと蓄積されていきます。

こうなるとおそらく日本のメーカーはさらに技術開発に注力して中国を引き離そうなどと考えるかもしれませんが、それは良い手段ではないかもしれません。技術では遅かれ早かれ追いつかれてしまいます。産業に携わっている人数が違いますから。スペックを必要以上に上げていっても消費者には響きません。

それよりはこれまでになかった用途、ニーズを満たす商品づくりをしていくべきではと思います。

おむつという視点で見れば花王だけでなく、ユニチャームも心配ではあります。これからの動向を見守りたいですね。