かもがわ総研

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ユニークな京都企業をざっと調べてみた

newspicks.com

 

NewsPicksの特集で京都企業の特集が始まっていて興味深 く見ている。京都企業がこのように特集されるのは何もこれが初めてではない。 以前にも似たような特集は組まれていてそれにも目を通したことは ある。

でも数年たてば産業の情勢は簡単に変わってしまうので、 同じ企業でも数年前と比べてどんな分野に注力しているのか、 さらにこれから中長期的にどんなことに投資をしていくのか? ということを考えながら読むと味わい深い。

ぼくが大学時代を過ごした京都は業界的にけっこう偏っていると思っていて、 主としてエレクトロニクス企業が集積している。

例えばNPの特集でも取り上げられている村田製作所日本電産、京セラ、ロームオムロン堀場製作所島津製作所、SCREEN、日写、 村田機械GSユアサ任天堂など高い市場シェアを握っている企業が多い。

自分自身も就活時には関西に残ることしか考えていなかったので、 もちろん京都の企業も受けていた。 エレクトロニクス業界では名の知れた企業たちであるため、 どの企業も競争率は高い。

上記のほとんどの企業の社長も京都大学もしくは関関同立を卒業しているので、地元色が強い。個別に京都の企業を見ていきたい。

 

村田製作所

・製造業

・主力製品→コンデンサ

・売上/純利益→1兆3700億円/1,460億円(2018年 3月期)

・社長

村田 恒夫代表取締役社長

京都府出身67歳。同志社大学経済学部卒業後に村田製作所入社。ドイツ現地法人社長などを経て2007年代表取締役社長に就任。

・特徴

電子部品メーカーとして、日本のみならず世界を代表する最大手格。iPhone向けのコンデンサを出がけており、海外売上高比率は92%と極めて高い。 京都のエレクトロニクス企業と言えばまずこの会社の名前が上がる だろう。京都の大学生でも就職活動では大人気の企業でもある。 最近ではスマホ部品の需要を捉えて売上高を大幅に伸ばしているが 、一方で5G次世代通信や車の自動運転技術などにいち早く投資を 進めていて、車載向けではすでに世界シェアの過半を占めており、 直近の業績は盤石と思われる。

 

日本電産

・製造業

・主力製品→各種モーター

・売上/純利益→1兆4880億円/1,310億円(2018年 3月期)

・社長

永守重信代表取締役会長兼CEO( 社長は吉本浩之代表取締役社長執行役員

・特徴

村田製作所と同じくオーナー企業だが、 創業者である永守会長が今も健在で陣頭指揮を執っている。 ぼくも前職で新卒のころ日本電産から転職してきた人と同期入社と なり研修中に色々と話したが、「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」という社訓や、 休みが欲しければ会社を辞めろというモーレツな社風は事実らしい 。 古き良き日本のサラリーマン像を体現する会社でどの競合他社より も長く働くことで成長してきたが、最近はその方針を永守会長自身が転換しにかかっている。より効率的に働き少ない労働時間で成果を出せるような仕組み作りに取り組んでいる。 オーナー企業の一番のメリットはここだと思う。 環境の変化に応じてトップダウンで会社が進む向きを変えることが できる。 もちろんトップには先見の明が備わっていることが前提となるが。

産業機械や家電など社会のあらゆるところに同社のモーターが設備 されているが、最近では自動車の電動化により巨大なマーケットが開けてきており 、株価も2017年以降非常に高い水準で推移している。( 米中貿易摩擦の影響を織り込み4Qは同業他社に先駆けて下方修正 しているが)

同社だけでなく、 ソフトバンクファーストリテイリングなど強烈なカリスマを持つ 会社には、 そのトップが退任した後も成長し続けられるのかというオーナーリスクが付きまとう。そのため日本電産も後継者探しに着手している。 昨年代表取締役社長に就任した吉本社長は元双日の商社マン。双日カルソニックカンセイで自動車部品の経験を積んだ後に日本電産グ ループに入社。 赤字の子会社を立て直したことで本体取締役副社長に昇格しており 、永守会長の信用は厚い。

 

京セラ

・製造業

・主力製品→セラミック、電子部品

・売上/純利益→1兆5770億円/817億円(2018年3月 期)

・社長→谷本代表取締役社長

・特徴

京セラの創業者稲盛和夫会長も永守会長に負けず劣らず有名人だ。 京セラだけでなくKDDIau)の創業者でもあるし、 最近だと日本航空会長に無報酬で就任している。 パナソニック創業者の松下幸之助に影響を受けており、 アメーバ経営など画期的なマネジメント方法を編み出し、 稲盛会長の書いた著書は日本だけでなく中国でも翻訳され数多く販 売されている。IRを改めて見てみると自動車部品、半導体部品、 電子デバイス、通信事業、 複合機などそれぞれのセグメントがまんべんなく利益を上げていて穴がない。

 

ローム(LOHM)

・製造業

・主力製品→カスタムLSI半導体集積回路

・売上/純利益→3,970億円/372億円(2018年3月期 )

・社長→藤原 忠信代表取締役社長

宮崎県出身、関東学院大学文学部卒業。一貫して営業畑を歩む。 ロームは初代、二代目ともに立命館大学出身者であったため、 藤原社長は初の京都以外の大学の社長となる。

・特徴

出ましたみんな大好きロームさん。 冬の期間右京区にある本社を解放して大規模なイルミネーションを 開催していて、 京都市内の大学生はデートにはうってつけの場所でした。 そんなロームは顔採用で有名な会社です。ロームには京都中のレベルの高い女性が集まってきます。

同社の製造するLSI集積回路) は市場を席巻するほどの高いシェアを握っており、 高い株価を維持している。

ここも車載機器やFAなど産業機械への拡販を進めているものの、 先期最も利益への寄与度が高かったのは、 ゲーム機向け半導体というから意外だ。 既出の最大手格の企業と比較すると小規模な売上だが、純利益率は 10%弱あり、製造業としては優秀であると言える。

 

オムロン

・製造業

・主力製品→FA制御機器、医療機器

・売上/純利益→8,600億円/834億円(2018年3月期 )

・社長→山田義仁代表取締役社長CEO

山田社長は大阪出身、同志社大学経済学部卒業の関西人。 一貫して医療機器畑を歩み、オムロンヘルスケア社長などを経て4 9歳の若さでオムロン本体の代表取締役社長に昇格した。

・特徴

JR京都駅前にオフィスを構えるリッチな企業。toCの事業とtoBの事業両方を持っており、コンシューマー向けでは血圧計などでよく知られている。 ビジネス向けではファクトリーオートメ―ション( 工場の自動化機器)で高いシェアを持つ。このFAシステム事業が 全売上の半分近くを稼ぎ出す。2018年度3Q以降米中貿易摩擦 の煽りで主要マーケットである中国での投資意欲が減速しており、 見通しは不透明だが米中の対立が落ち着けば一気に回復すると読ん でいる模様。

余談だが創業期には、自動改札機やATMなどを開発したのも同社 であり世の中にないものを作り出すスピリットがある。 余談の余談でプリクラ機を手掛けるフリュー社も元々はオムロン社内ベンチャーだ。 ちなみに社名の由来は創業時の本社があった地名が「御室( おむろ)」だったことにちなんでいる。

 

堀場製作所

・製造業

・主力製品→排ガス検査機器など

・売上/純利益→1,953億円/162億円(2017年12月 期)

・社長→堀場厚

・特徴

数年前フォルクスワーゲンが燃費の不正検査で炎上したときに暗躍 したエンジン排ガス測定器を製造するメーカー。 排ガス測定器では世界シェア80%を占めている、 隠れたニッチトップ企業。 同社の飛躍のきっかけは米カリフォルニア州の検査基準でデファクトスタンダードを押さえたこととのことで、 ぶっちゃけこういう設備メーカーというのは、キーボードのキー配置や表計算ソフトなどユーザーに最初に受け入 れられたモン勝ちなところはある。 もちろん絶えず技術を磨いている成果であるとも言えるけど。

ここもオーナー企業で現社長は二代目になる。社是である「 おもしろおかしく」 なんてサラリーマン社長ではとても掲げられない。 ユニークな社風やダイナミックに事業の方向を転換できることがオ ーナー系企業の最大のメリットだと言える。

 

島津製作所

・製造業

・主力製品→成分検査機器

・売上/純利益→3,765億円/298億円(2017年3月期 )

・社長→上田 輝久代表取締役社長

・特徴

島津はノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏が在籍する会社。 学士で唯一のノーベル化学賞受賞者、 かつ現役サラリーマンで史上初のノーベル賞受賞者らしい。187 5年創業の老舗中の老舗。明治時代が始まったばかりで、板垣退助自由民権運動を始めたり、江華島事件で朝鮮を開国させたりしていた時期だ。

事業は、主にアカデミック機関向けの分析機器が多いほか、自衛隊に航空機器も納入している。

ちなみに後述のGSユアサは同社の蓄電池工場が独立したもの。

 

SCREENホールディングス

・製造業

・主力製品→半導体ウエハ洗浄装置

・売上/純利益→3,393億円/285億円(2018年3月期 )

・社長→垣内 永次代表取締役社長CEO

・特徴

SCREENはエレクトロニクス産業の中でも半導体製造装置とい うフィールドにいる。 その半導体製造工程も前工程と後工程に分けられる。 前工程はざっくり成膜→露光→エッチング→ 不純物拡散という工程からなりウエハ加工工程とも呼ばれるが、S CREENはその中の洗浄機で卓越した技術を持っている。前工程においてシリコンウエハを成膜しては洗い、エッチングしては洗い、研磨しては洗いと全工程に占める洗浄の工程は意外と多い。不純物が混ざると品質の低下を招くので、半導体の品質すなわち洗浄装置の精度にかかっているとも言える。世界の半導体洗浄機市場においてSCREENは東京エレクトロンとシェアを二分する最大手格である。

 

村田機械

・製造業

・主力製品→繊維機械、工作機械、FAシステム

・売上/経常利益(2018年3月期)→2,530億円/324 億円

・社長→村田大介代表取締役社長

・特徴

今回挙げた京都企業の中では唯一の非上場を堅持している企業。 非上場にしている目的は意思決定の迅速化のためとのことで、 今後も上場する意向はないらしい。現社長は一橋大→ スタンフォードMBA

同社も複数の事業部を持っていて、 昔は合成繊維を巻き取るワインダーやツイスターという繊維機械を 開発した企業。日本では繊維業は斜陽産業になってしまったが、インドや中国にメインマーケットを移して依然高いシェアを握って いる。事業別で最も大きい売上を占めるのが物流システム部門。半導体工場やFPD(フラットパネルディスプレイ) 向けのクリーンルーム対応の搬送システムが成長中。

 

GSユアサ

・製造業

・主力製品→バッテリー製品

・売上/純利益→4,100億円/114億円(2018年3月期 )

・社長→村尾 修代表取締役社長

・特徴

自動車用、産業用、バックアップ電源装置など幅広い用途のバッテリーを製造しているメーカー。バッテリーと一口に言っても色々な種類があるが、 鉛蓄電池を日本で初めて製造したほか、 リチウムイオン電池で国内トップのシェアを持つ自動車向けでは三菱自動車向けに車載バッテリーを供給しているほか、本田技研工業ともブルーエナジーという合弁企業を設立している。

そして平均年収がかなり高い。村田製作所や京セラが700万円台 、オムロンや島津が800万円台、SCREENが900万円台とメーカーにしては高い水準だが、GSユアサは1100万円台にのぼる。す、すごい。

 

そのほかの企業もユニーク

 

そのほかエレクトロニクス業界以外の大手企業というと、 世界に誇るゲーム企業任天堂が挙げられるし、化学業界ではSAP (高吸収性樹脂)のシェア大手である三洋化成工業もある。 同社は東レ豊田通商の関連会社となっており、総合商社の物流網を活用してSAPを世界に販売している。先日次世代電池として期待される全樹脂電池の実用化にも目途をつけ、10年後に1000億円の売上を目指すという。現在の連結売上が1600億円である同社からすると凄まじいイン パクトになるが、こうした大風呂敷が可能になるのも東レの技術支援や豊田通商の販売ネットワークや資金力といった後ろ盾があればこそだと思っている。

IT企業でははてなブログを運営するはてなも京都発祥の企業だ。このブログでお世話になっているので忘れずに挙げておいた。

東京の企業も京都にオフィスを設立する動きが始まっている。LINESansanサイバーエージェントといったIT企業も昨 年相次いで京都に開発拠点を開設した。

京都は道がコンパクトで住みやすい。 自転車があれば京都市内の一通りの主要な場所はほぼアクセスする ことができる。また京都は学生の街でもある。京都大学を筆頭に、 関関同立の一角である同志社大学立命館大学産近甲龍龍谷大学京都産業大学、さらに佛教大学京都造形芸術大学京都工芸繊維大学などの専門性に特化した大学もあるし京都女子大 学、 平安女学院大学などエアラインや銀行にかわいい女の子を供給する 女子大もある。

京都に進出する企業が狙っているのは優れたエンジニアのリクルー ティングが目的で、 学生数が多ければ優秀な学生にも巡り合いやすい。 京都にオフィスを置けば就活時にはそれだけ身近な企業になる。 自分自身、京都に住んでいたことがあるから言えることだが、 京都は若い人が多いし、家賃が安く(東京より40%くらい安いと いう感覚)、 四季によって表情を変える街並みが非常に魅力的なので、 ぼくもゆくゆくは京都に戻って暮らしたいと考えている。