対韓輸出規制とその後に起こることの予想
先週末から話題になっている、経産省が韓国に対して輸出しているフッ化水素(エッチングガス)、レジスト、フッ化ポリイミドの3品目輸出規制をかけるというニュースについて、後からどんどんと情報が入ってきています。
半導体材料の対韓輸出は、建て前では個別契約ごとに審査・許可する方法に切り替えるとなっているが、けさの読売新聞によると原則として許可は下りないということで、実質的に禁輸ということになるようだ。
— Cafe_Forex(テムズ川の流れ) (@UponTheThames) 2019年7月1日
ぼくはこれまであまりビジネスでも韓国には関係してこなかったので、日韓関係の情報にはあまりキャッチアップできていませんでしたが、輸出規制の問題については昨年末から協議されていたようです。
そんな中、世耕弘成経産大臣がツイッターで説明を補足してくれていました。
韓国への輸出管理上の措置について、昨日からの報道を見ていると、メディアはまだまだきちんと理解できていないようだ。
— 世耕弘成 Hiroshige SEKO (@SekoHiroshige) 2019年7月3日
ホワイト国=友好国ではない。相手国内で輸出管理が厳格に行われているかがポイント。日本にとって重要な友好国であるインドもホワイト国ではない。
河野外務大臣もそうですが、国務大臣がツイッターで情報を発信してくれるのは助かります。
みなさんご周知のように、日本が韓国をホワイト国と認定したのは2004年のこと。それまでは韓国はホワイト国ではありませんでしたので、むしろホワイト国であった期間の方が短いです。
今回輸出規制が韓国にとって影響が大きいのは、対象になった3品目が日本企業のシェアが非常に高いという理由があります。その日本が輸出しないぞと言ってきたらそれを輸入している韓国企業にとっては大きな痛手になります。
さらにこのフッ化水素、ぼくも全然知らなかったんですが、猛毒だそうです。そのため他国の企業が儲かると思っても、上記のように高純度に加工するのに高い技術が必要となること、このような毒物を安全に取り扱う設備を建設、運用できないといけないので、おいそれと参入できないということが日本企業がシェアを占めている要因と言えるようです。
特に高純度フッ化水素はステラケミファ、森田化学、ダイキンの関西三銃士でしか作れません。LG化学が内製しようとして断念しました。当然今から一からプラント立ち上げってどういう話かわかりますよね。
— ただのセールスマン(中学にねんせい) (@ryupa1967) 2019年7月1日
ステラケミファの売上高は400億に届かない。ウチ、半導体LCD製造分野の売上は年200億円。高機能化学品の輸出比率は60%で、更に中韓台で1/3ずつと仮定するとMin40~Max60億円程度の販売減。
— キレイなSI-X (@sieiri3) 2019年7月1日
サムスン単体の半導体売上は8兆円規模(LCD外数)。手持ち在庫があっても何千億のダメージとなるか分からない。 https://t.co/8hLaRbIlBR
さらにさらに、メーカーってだいたい在庫をある程度持っておくものですが、サムスン電子は3ヶ月分なので、
しかしながら今回の措置はサムスン電子やLG電子、SKハイニックスといった韓国企業にダメージがあるだけでなく、もちろんこれらの製品を販売している日本企業も売り先を失うことを意味していますので、日系企業にとっても多少なりとも打撃はあります。
また今回とは別の問題になりますが、日本がこれらの製品の規制をすることができるのは日本企業だけで高い市場シェアを占めているからに他ならないのですが、逆にフッ化水素の原料も中国に90%程度押さえられているので、同じことを中国にされる可能性もないとは言えないわけです。サプライチェーンが色んな国へ跨がっているので戦略の舵取りが非常に難しいと思います。
フッ化水素、原料の蛍石は9割中国で色々難しいねw 日韓だけじゃなくて色々繋がってる。まあ韓国は製造装置も素材もないデザインとアッセンブリーだけで案外即死するかもしれんw
— ヒーホーくん (@Heehoo_kun) 2019年7月1日
ところでこれらの製品ですが日本が高いシェアを持っているとはいえ、100%ではないのであれば、わずかのシェアを持っている他国の企業へ頼み込めばいいのでは?とぼくは思ってしまいました。が、それも難しくなる可能性があります。
それは韓国が以前からフッ化水素を北朝鮮へ横流ししている疑惑があるためです。フッ化水素を使用することで6フッ化ウランという核兵器開発に関わる物質を作ることが可能になります。
北朝鮮の核開発は同盟国であるアメリカが許すはずがないし、北朝鮮の核開発を助長したことになれば、それを輸出した日本までもが国連制裁の対象になってしまいます。なので、本当に北朝鮮へ横流ししているのであれば、日本企業だろうとどの国の企業であっても韓国へ輸出することはできないだろうということです。
韓国勢が仮に完成品を生産できなくなった場合、どんなことが起こるのでしょうか。どこかが作れなくなれば競合がその穴を埋めることになるので、
半導体であれば、インテル、マイクロン、ブロードコム、クアルコム、TI。サムスンとSKハイニックスが抜ければ上位はほとんどアメリカ企業になってしまいますね。
スマホではどうでしょうか。
サムスンが脱落するとアップルが首位に返り咲くことができますね。ここでもアメリカ企業が利することになるようです。中国メーカー3社も急激に追いついてきているようですが。。
有機ELディスプレイは1位のサムスンがほぼ自社製品向け、2位のLGがテレビ用なのでスマホ用の有機ELは大丈夫なんでしょうか。現在ファーウェイのフォルダブル(折りたたみ)スマホを開発するにあたって組んだ相手がBOEという中国最大のディスプレイメーカーですが、BOEのこれまでの最大顧客がサムスンだったようです。ファーウェイどうするんでしょうか。シャープやJDIが勢いづくこともあるんでしょうか?
この件を機に状況を注視していきたいですね。