マネージャーとしての日本人のレベル
ここのところいろんな企業を訪問している中で、マネージャーとしての格が違うなあと思わされることがよくある。
先日インド企業のインド人マネージャーと話をする機会があった。
インド人ということなので、もちろん英語は流暢(インドのアクセントはこの先ずっと慣れないかもしれない)。
ところが、彼はおもむろに電話を取りだすと、同じく流暢なベトナム語でベトナム人のスタッフに指示を飛ばし始めた。
最初てっきりヒンディー語を話しているのかと思っていたぼくが面食らった。
聞いてみると、そのインド人はベトナムですでに9年過ごしているということで、自然と話せるようになったそうだ。
彼は300人近い従業員を2人のインド人マネージャーで回している。現地スタッフにも相当程度権限委譲しなければとてもオペレーションできないだろう。
また別の日本企業の顧客の現法社長とお話しする機会を得たことがあった。
その会社はベトナム現法は日本人一人しかいない。工場をぐるっと見学させていただいて感じたことは社内の誰もが楽しそうに働いていることだった。
近くにいる社員は作業を止めて挨拶をしてくれるし、笑顔もやらされている感が見られない。社長もたいそう慕われているようだった。
彼曰く、日本企業は日本人が多すぎるとのことだ。日本人駐在員はローカルスタッフと比べて管理はしやすい一方でコストがかさむ。
駐在員一人あたりのコストをおよそ1,000万円とすると、駐在員一人を派遣するお金で何人ものベトナム人が雇えるし、派遣しなければその分営業利益も増える。
日本人をたくさん送り込みたがるのは、管理が苦手なことの裏返しなので、高コスト体質から抜け出せない。
またその社長は社員の満足度(エンプロイーサティスファクション)を重視しているという話がとても印象的だった。
小売り企業などで顧客満足度(カスタマーサティスファクション)の向上を掲げる企業はよくあるけれども、自社の従業員の満足度をKPIに組み込んでいる企業は初めてお目にかかった。
「なぜ従業員満足度なのですか?」と聞いてみた。
従業員が労働環境にストレスを抱えていては生産性は上がらない。日本でのやり方が通用しないいら立ちを抑えて、ベトナムにフィットしたやり方を探すことが重要とのこと。ベトナムは女性従業員がとりわけ多く、女性の生産性をいかに上げるかが全社の利益に直結する。
今まさに自分が悪戦苦闘していることを指摘された気がして恥ずかしくなった。自分の会社との歴然とした差に打ちのめされながらも、この考え方はぜひとも取り入れていきたいと思った。