かもがわ総研

ベトナムでもがく中間管理職です。営業、マーケ、法務、採用なんでもやってます。

ベトナム人を採用する難しさ

ベトナムのフリーペーパーを開くと、それはたくさんの人材紹介会社の広告を見ることができます。

昨今中国での生産コストの上昇や米中貿易摩擦などの影響で多くの日本企業がベトナムに工場を移転してきているという背景もあって日本人の求人は多いのですが、それ以上にベトナム人の採用したいという意欲も大きいと感じています。

ベトナムに工場を作ったら実際に手を動かすのはベトナム人なわけで、日本人の役割としては彼らのマネジメントや顧客の日本人マネージャーとの意思疎通、本社とのスムーズなやりとりが期待されることが多いです。

ベトナム人はけっこう簡単に仕事を辞めてしまいます。ぼくがベトナムにある日系企業を訪問して世間話から聞いた限りでは、常に採用活動をしており、毎日のように新入社員のための導入研修を行っている。

ベトナム人と日本人は手先が器用だとか、仏教がマナーのベースにあるなどという点でよく似た国民性を持っていると言われますが、やっぱり根っこのところでは価値観が違うんだなあと、普段から直接彼らに接していてそう思います。

 

家から遠いので、辞めます。

まず前提として、ベトナム人は今の仕事が自分にあまり利益がないと判断するとそこから退職するまでは早い傾向にあります。日本のように石の上にも三年や、同じ会社で経験を積まないと忍耐が、、といった感覚は持ち合わせていないように思います。

また優先順位として圧倒的に家族>仕事という価値観は広く共有されています。家族をとても大切にしているので、日本人のように意味もなく残業するということはあり得ません。(自身のスキルアップのためなど明確な目的の下ならば残業することもあります。)

とあるフリーペーパーでこんな記事を見ました。ベトナム人が退職を決意する2つの要因について、一つは自分が今の会社で待遇が上がらなかったり、成長することができないと思ったとき。これについては会社側が別の仕事にアサインするなどで解決可能な場合が多いそうです。

もう一つが、家から職場までが遠いときだそうです。「それくらい応募する前に検討してきてくれ」と感じたのはぼくだけではないはずですが、ベトナムの事情を知らないと、なぜこんなことが起こるのかを誤解してしまいます。

まずベトナムには地下鉄のような公共交通機関がなく、ほとんどの人がバイクで通勤しています。車はまだ誰もが持てるほど普及していないのが現状です。

四季のあるハノイでは、夏は暑いし、冬は寒いし、雨が降ればカッパを着て通勤することになります。ラッシュアワーでは空気もひどいものです。

また、ベトナムの一般的なワーカーは家族とともに住んでいる場合が多いです。一人暮らしをできるような給与水準でないことが大きいと思います。ベトナムにある日系企業は会社の門の前に求人広告を貼りだしていたりして、そこに月給なども併記している場合もあります。だいたい5万円ほどです。弊社の20代の女の子もだいたいは実家から通勤しているので、あまりに遠いところだと時間がかかりすぎて通勤できないのです。

職を得ることを焦ってしまって、家から遠いところで妥協したものの、働いてみるとやっぱり通勤が負担になり、家族との時間も減ってしまうので違う仕事を探しますという考え方なんでしょうか。

 

欧米企業との語学人材の取り合い

日本人なら鉄道網が発達しているため、家から1時間かけて通勤というのもザラにありますが、ベトナムでは通勤距離が原因で採用できる人材の選択肢も狭まってしまいます。

あと、けっこうびっくりしたんですが、ベトナムでは英語ができるのとできないのとで給与が二倍以上も違ってくるらしいので、英語教育自体は盛んです。ただベトナム語の訛りに引っ張られた英語を話す人が多く、大変聞きにくいです。

だからこそ、訛りの少ないきれいな英語を話せる人から順に給与水準の高い欧米企業へ流れていきます。ベトナムに進出している欧米企業は多くはないので、日本企業に来るのはそこに入れなかった人たちということになります。

語学ができる人がただでさえ取り合いになっているところに、会社の立地が辺鄙なところにあると、余計に人材採用に苦労することになってしまいます。

日系企業ベトナムに工場を建てるとなると、通常は工業団地というまとまった区画に集まって進出することが一般的ですが、法人税が数年間免除されるなどのメリットもあります。しかし最近できている工業団地はあまりアクセスがよいとは言えません。なるほどコストは安くあがるのでしょうが、進出して工場も建ててしまったあとに、なかなか人材が採れないことに苦しむことになるかも知れません。

ホーチミンの方でも、日本企業だけでなく中国企業も進出してきていて、地価やオフィス賃料なども高騰しているようです。コストを下げるためにベトナムに来たものの、蓋を開けてみたら実は日本で作った方が安く上がりましたみたいな笑えないことになるかもしれませんね。